「聖女様自ら、そんなことなさらなくても」
魔獣が魔核を取り出す作業は、重労働だ。
レナルド様は、気を遣ってくれるけれど、戦闘に参加してない私としては、手伝わせて欲しい。
魔獣ごとに、その魔力の源になる魔核がある場所は違い、知識がなければ、取り出すのは困難だ。厳しい聖女教育で、勉強した知識も、せっかくだから活かしたい。
「汚れてしまいます」
「汚れても、清浄魔法使えば良いから平気。私も一緒にしたいの。……ダメですか?」
「……聖女様。いいえ、御心のままに」
この圧倒的、わがまま聞いてもらった感。
きっと、一般的な聖女様は、こういったことはしないのだろう。
黙って、作業を続けながら、みんなの作業をそれとなく見る。そして、それぞれに個性があるのだと、感心する。
「すごい……。魔法を使って取り出すんですね」
ミルさんは、「そうよ。手が汚れるのは、イヤなのよ」と言いながら、風魔法で魔獣の体を切り裂いて、魔核を取り出す。
ビアエルさんは、素早すぎて手元が見えない、二人は参考にならなそうなので、ロイド様とレナルド様の手元を見る。
ロイド様は、意外とアバウトで、ザクザクと処理しながら、楽しそうに見える。
レナルド様はなんというか……完璧だ。ナイフを持つ手は、一分の隙もない。
どちらにしても、私がもたもたと、ようやく一個取り出した頃には、全ての作業は終了していた。
「清浄魔法かけます!」
仲間たちだけでなく、汚れていた周囲まで美しく、空気までも清浄になる。王宮では、聖女ではなく下女に相応しいような魔法だと、揶揄された曰く付きの魔法だ。


