『僕の聖女に逢えるって、夢で見たから。まだ、終わりにしないって決めた』
「僕の、聖女? だって、もう異世界の扉は閉められて、新しい聖女は来ないんじゃ」

 シーンッと、シストが黙り込む。
 また、制約というもののせいで、喋ることができないのだろうか?

『でもさ、レナルドはもう気がついているんじゃないの』
「何のことでしょうか。俺は、愛しい妻と娘は、邪な獣から守り抜きますよ?」
『ほらぁ。君の息子になるのは大変そうだ』
「……俺は、強すぎる魔力で、生まれる時に母を死なせた。だからこそ、家族を守り抜くと決めていますので」
『ん、魂の片割れの乙女と、幸せにね?』

 レナルド様を、幸せにしたいと、改めて思う。
 そういえば、魔人はレナルド様のことを、聖女の何だと言っていただろうか。よく聞こえなかったのだけれど。

『異世界から聖女はもう来ない。でも、聖女がもう生まれないなんて、誰も言っていない。初代聖女も言っていた、異世界から聖女が来ない世界が来たらもう一度会おうって』

 リボンがついた、プレゼントの箱は、私の左肩上で、今日もクルクルと回っている。視界の端に、箱が映っていないと落ち着かない。慣れって恐ろしい。

 そして、レナルド様が、箱を見つめる氷点下の瞳も、相変わらずだ。