「波木さん……力、抜いて」


「……が、がってん」



 なんで私がこんなロマンのかけらもないふざけた返事をしちゃうのかと言うと、こうでもしないと耐えられないからだ。鳩井の色気に。

 最近の鳩井は顔色が良くなって、目の下の隈も無くなって、端正な顔立ちがより際立つようになった。

 艶やかな黒髪からのぞく熱っぽい切れ長の目も、爽やかな石鹸の匂いがする首筋も、すごくすごく色っぽくて。

 油断すると心臓を貫かれて叫びながら猛ダッシュで逃げ出したくなっちゃうほどの破壊力で、もう、もう、耐えられない。





 と、いうわけで

 力なんて抜けるわけがない。