15時59分、保健室の一番奥のベッド。


 ガチャッと合鍵で扉を開ける音がする。

 息を切らして、でも静かに入ってくるのは、鳩井。


「お待たせ」


 息を整えながら鳩井は荷物をそこに置いて、手際よくカーテンをしめる。

 ここまで流れるようなスピード感なのに、所作の全部がきれいなあたり、さすがの鳩井。

 いつもならここで眼鏡を外す鳩井だけど、今日は外さない。

 なぜなら鳩井、眼鏡をしてない。

 コンタクトにしたんだって。

 だから最近の鳩井の目はいつも少し潤んでる。

 まだ慣れないらしい。

 かわいい。

 鳩井がこちらに振り向くと、シトラスの制汗スプレーの匂いがした。

 鳩井は授業が終わってすぐ、バスケ部の練習が始まる前まで体育館で練習してるって、晴翔から聞いた。

 そうだ、お疲れ様ぐらい言ってあげよう。