必死でノアの足を踏んづけて逃げようとしてると、聞こえてくるのは通りがかりの野次馬たちの声。

「えっ、ヒナちゃんといる人誰!?超かっこいい!!お似合い〜♡」「あれモデルのノアくんじゃない!?昔ちょっと付き合ってたらしいよ」「えー尊い〜」


「!!お似合いじゃないよ!尊くないよ!!」


 私の心からの叫びは届かずに、野次馬さんたちはいなくなってしまった。


「っ……、」


 お願いだからみんな、私の話を聞いて……


「フフッ、みんなも先立ってお祝いしてくれてるね♡」


 ノアが私の顔を嬉しそうにのぞき込んでいる。


「ねぇ、キモい」

「絶対僕が勝つから、待っててね」

「ほんと人の話聞かないね?」


 ノアはニコッと笑ってから、ちゅっと頬にキスを落とした。


「!?」


 ぞわぞわっと寒気が全身を走り抜けた。


「じゃーまたね〜」


 ノアは少年のようなイタズラな笑みを浮かべて、ようやく私を開放して去っていった。

 私は膝から崩れ落ちて、床に手をつく。



「ヴォエエ」



 リアクション芸人ばりに嗚咽を漏らす私に、いつの間にかすぐ横にいた美愛が「体育館で吐いたらあかんよ?」と可愛く声をかける。



 ノアと、復縁…!?

 絶対、絶対無理だから〜〜〜!!