私は心が暖かくなり、気持ちも落ち着いて来た。瑛ちゃんにプロポーズをされて結婚する運びになってから、ずっとずっと気にかけていた心の引っかかりが解けた瞬間だった。どんなきっかけであろうと、引っかかりが解けて良かったと胸を撫で下ろした。

私は私らしく、堂々としていよう。そう思えた瞬間だった。

お茶会がお開きになり、片付けをしてから買い物に出かける。買い物に出かける途中にマンションの中庭の日陰で昼寝をしている人物が居るのに気付く。私は咄嗟に自宅から外に出る。

眩しい陽射しと周りに植えてある花々が私に微笑みかけていて、その近くに居るあの人に早く会いたかった。

「……陽菜乃?」

「わ、起こしちゃった?」

「んーん、もうそろそろ起きなきゃ行けなかったから大丈夫。……今日の夜は帰るからね」

眩しい陽射しに見守られながら、中庭のベンチで昼寝をしていた瑛ちゃんに抱きしめられる。散歩している家族連れが居たりするのにお構い無しにぎゅうっとされて、身動きが取れなくなる。

昨日の夜は患者さんの容態が安定せずに泊まり込みだった瑛ちゃん。そんな時は連絡アプリに『今日は帰れない』との一言だけが届くので、自分で察する様にしている。守秘義務もあるし、瑛ちゃんも疲れているので、とやかく聞いただしたりはしない。

早く帰れる日も遅くなる日も帰れない日も、どの日も必ず連絡があるので信じて待っていられる。私も会いたかったので、こんな場所でも会えただけで嬉しい。