猫と髭と夏の雨と


離陸前の機内で、窓側の席へ着くと、不意に友人からメールで、朝の番組録画が送られて来る。

取材する女性を前に、彼女が応えていた。
イヤフォンを指し、足を組みながら頬杖を着くと、自然に瞼が閉じてゆく。

「今日はお忙しい中、ありがとうございます」

「こちらこそ、宜しく御願いします」

「かなり写真集が話題みたいですね……」

「はい、御陰様で。ありがとうございます」

「今回の作品は無名のカメラマンと聞いたのですが……」

「いえ、とても綺麗な景色を撮られていて、尊敬出来る方です」

「撮影に関して咲山さんが直々に依頼したと伺いましたが、何か理由が有りますか?」

取材の声を耳にして、思わず目を開けていた。

「はい、私が拝見するのはいつもプロフ写真が陶芸家のように似ていて、見分けが付かなくて……」

「その気持ち分かります」

「でも、その方は、自分の写真を、態と絵の具で滲ませたような絵画みたいで、それが印象的で素敵だな、と思ったんです」

思わぬところで、解明された答えに口元が綻ぶ。

「それで十年は笑えそう」

ふと、彼女の声が脳裏に過ぎ行く。

携帯を手にしながら、自然に胸の内で返した。

この動画で、暫く恋をしてそうだ、と。