猫と髭と夏の雨と


空港の長椅子で搭乗時間を待つ合間、徐に携帯を取り出し、残された履歴を削除していく。

腑抜けた身体で、ただ、呆然としていた。

変わり映えしない風貌は周りに人を寄せ付けず、両隣は空席のまま。

出発を前に彼女を思い出して、仕方の無い男だと鼻で扱う。

そんな奴の前に颯爽と現れる人。

背筋を伸ばして飴を口にしながら、見物に来たと言う態度で思わず苛立つ。

「何しに来たんだよ」

「泣いてるかなと思って」

「……ふざけんなよ」

軽く鼻息を飛ばすと、寂しそうに吐き出す。

「本当に行っちゃうんだね」

「嘘だと思ってた?」

彼女は静かに首を横に振った。

「そろそろ、行くよ」


席を立った隙を、見計らうような声が飛ぶ。


「ねぇ、ハグして」