猫と髭と夏の雨と


「ごめん……」

静かに告げると、彼女は首を軽く横に振り、窓の外を眺める。

雨脚は激しく音を立てながら、滝のように目の前を流れてゆく。

「お髭さん……」

「んー?」

「付き合ってくれてありがとう、動物園」

「仕事だからな」


今まで楽しかった、など言えやしない。
こちらこそ、と社交辞令さえ返せない。


「写真集も、ありがと」

「なんだよ、今日はありがとう祭りか」



明日は必ず来るのに、過去も先にも行けない。

笑えもしない顔を、どうにか繕うだけで、口元が震えた。



「お髭さん」

「なに」

「呼んだだけ」


勘違いで無ければ……、彼女も同じ気持ちで居る。