「あいつは仲間が出来てから変わった、昔は一人も居なかったからな」
「仲間ね……」
煙草の火は既に消えていた。長い灰が膝の上に落ち、汚れを払うと同時に吸殻を灰皿へ投げ入れ、二本目を口にして火を付ける。
「自分で選んだ奴らだからな、必死にもなるさ。誰だって大切な者は失いたくないだろ」
彼の言葉が少しだけ分かるような気がした。
本人を犠牲にして周りを護りながら、底辺の経験が残した傷跡さえ鈍感になっている。
強さの裏側に隠された弱さを、誰が庇うのか、と想いを寄せた拍子に、ちくりと胸が痛んだ。
「すげぇな……、あいつ」
「今頃気付いたの?」
互いに笑い合う隙間で、ふと彼女に会いたい気持ちが湧き上がる。
よく分からない心境のまま、何となく思考を傾けると、定期的な逢瀬を重ねた月日が過ぎ、いつの間にか理由も無く、連絡待ちの状態が続けば、先程の感覚も当然か、と勝手に納得した。
それよりも、考える事や片付けが有る、と脳裏で取り出したが、山積みにした現実が面倒になり、匙を放り投げて頬杖を付く。
すると、彼がテーブルの上で腕を組み、じっと此方を見つめている。
「なに?」
「お前さ、俺の代わりにニューヨークに行かないか」
訝しげな声を攫うように、唐突な要請を告げられ、耳が取れたのか、と思わず人差し指で掻く。
「俺の、代わりに、ニューヨークに」
繰り返しながらも、脳裏では既に飛行機の羽根が空を切っていた。



