二つ目の未練を解消してから二週間が経ち、十二月に入った。



「全然三つ目見つかんねぇじゃん」



なんだかんだ言って最後まで付き合うと言ってくれた楓は、最近なんだか苛立ち気味だ。


それもそのはず、未練を解消して消えると思っていた私がまだもう一つ未練を残してこの世に留まっているからだ。


私を捨てずに家に置いてくれてるあたり、楓には感謝してもしきれない。



「おまえも欲張りなやつだな。ちゃんと三つも未練残して死んでんだから」


「だからそれはもう何度もごめんって言ったじゃん!死んだ日の私に言ってよね!」



歯を磨きながらじろりと睨んできた楓に、身を縮こまらせていつもの定位置である部屋の隅っこで寝る体勢に入る。



たしかに記憶も全部思い出したし、未練も残っていないはずなのになぜか私はまだ成仏できずにいる。


友達にも家族にもちゃんとおわかれをできたと言うのに、一体なんの心残りがまだ私にあるというのだ。



「まだ思い出してないことでもあんじゃないの?」


「いやー記憶は全部戻ったはずなんだけどなぁ」


「中町に言ってないだけで誰かと付き合ってたとか」



最後の未練がどうしてもわからず、また茅乃に助けを求めにいったのだが、茅乃は首を傾げるだけだった。



一般的に考えれば、友達、家族以外の未練が残っているとしたら恋愛関係だと思ったが、私には付き合っている人なんていないし、なんなら初恋もまだなまま死んでしまったのだ。


だからそれはあり得ない。