あの花が咲く頃、君に会いにいく。

「あ…っ!」



お兄ちゃんに追いつく前に、途中で転んでしまう。


アスファルトで擦りむいた膝からは赤い血がたらりと垂れてきて、涙が滲む。



「紫音、大丈夫?」



お兄ちゃんが走って戻ってきてくれて、私を立たせてくれた。



「ごめんね、速かったよね。…あ、たしかポケットに…あったあった」



お兄ちゃんがポケットから出した絆創膏をぺたりと膝に貼ってくれた。


それだけでもう痛みがどこかに行ってしまう。



お兄ちゃんは優しい。だからそんなお兄ちゃんが昔から大好きだった。



「紫音。ちょっと花屋さん寄って帰ろうか」


「お花屋さん?」



夕方の帰りのチャイムが鳴り、お兄ちゃんと手を繋ぎながら家に帰っている途中で、ふとお兄ちゃんがお花屋さんを指差した。



「今日は母の日だから、母さんにカーネーション買っていこう」


「カーネーション?ってなあに?お花の名前?」


「そうだよ」



お兄ちゃんに手を引かれ、初めてお花屋さんに入った。