あの花が咲く頃、君に会いにいく。

もう少しで楓のアパートに着くというところで立ち止まる。



「茅乃の時もそうだったみたいに、思い出の場所…家にいた方が、記憶を思い出せる気がするの。だから今日は自分の家に帰るね」


「…そうだな。わかった」



楓とわかれ、もう一度我が家に戻り、さっきは行けなかった二階に上がる。


階段を上がってすぐの部屋に入ってみると、綺麗に掃除されている部屋にはベッド、勉強机、ほぼ小説で埋め尽くされている本棚と、シンプルだった。壁には学ランがかけられていて、ここがお兄ちゃんの部屋なのだとなんとなくわかる。



次に隣の部屋に入ると、こちらもベッドと勉強机、漫画の多い本棚に、壁にはアイドルのポスターが貼られていた。


こっちが私の部屋みたいだ。少し懐かしい気がする。



ふと、勉強机の上に置いてある写真立てが目に入った。


そこには、小学生の私とお兄ちゃんらしき男の子がピースをして写っていた。


その写真にそっと触れてみるが、触れるはずもなくすり抜けるだけだった。



ため息をつきながらベッドに寝転がり、目を閉じる。


そして、思い出にかかっている霧を掻き分けるように、夢の中に落ちていった。






「お兄ちゃん!待ってよう!」



私が小学一年生のこの時期は、四つ年上のお兄ちゃんにべったりでどこに行くにもお兄ちゃんを追いかけてばかりいた。


今日も公園に遊びに行くお兄ちゃんについて家を出ていったが、足の速いお兄ちゃんを追いかけるのはいつも大変だ。