あの花が咲く頃、君に会いにいく。

「中にお母さんがいたよ。…睡眠薬があった。眠れてないみたい」


「そうか…。今日はやめておくか。早乙女のお母さんが開けてくれないと、俺は入れないからな」


「…うん」



楓と来た道を戻ろうとすると、「あの…」と後ろから控えめに声をかけられた。


振り向くとそこにいたのは、四十代くらいの男の人だった。



しかもこの人…。



「未練解消中の霊…?」



そう呟くと、男の人がパッと笑顔になった。



「やっぱり君もそうか!でも隣にいる子は生きてるよね…?あれか!霊感がある、みたいな?」


「…そうです」


「うわあ!喋れる!本当に僕が見えてるんだ!」



男の人が子供のように目をキラキラと輝かせている。


それにしても、私と同じ未練解消中の霊と会ったのなんて初めてだ。



「お願い!僕の未練解消を手伝ってくれないかな!?」



男の人の名前は柴崎瑛一(しばさきえいいち)さんと言うそうだ。


生前は警察官だったそうで、宝石強盗の犯人を捕まえる際にナイフでお腹を深く刺され、亡くなってしまったらしい。