「とりあえず、今の早乙女の現状をまとめると、わかってることは名前と俺と同じ学校に通うクラスメイトってこと…くらいだな」



三日間も寝込んでいたおかげか体がとても軽く、くるくると回りながら飛んでいると、少し前を歩いていた楓が唐突に振り返ってきた。


人通りの少ない道をあえて選んでくれたのか、周りに人は見当たらないので私も口を開く。



「そうだね。あとは…あ、たとえば私と仲良かった人、とかはいなかったの?」


「…あ、そういえば、五人組でよくつるんでた気がする。クラスの中でも目立つグループだったから印象に残ってる」


「五人グループでいたってこと?その人達と接触してみれば、もしかしたら何か思い出せるかも!」


「名前は、中町茅乃(なかまちかやの)相澤凛(あいざわりん)宮野玲(みやのれい)畑中七海(はたなかななみ)だ。興味がなかったから詳しくは知らないけど、たしか入学してすぐ一緒にいたな。中学が一緒だったんじゃないか?って覚えてねぇのか」


「うーん…わからないや」



名前を聞いてもぴんと来ることはなかった。



しばらく歩いていると、同じ制服を着た生徒が徐々に増えてきて、私と楓は自然と口をつぐんだ。


慣れたように歩いていく楓の後ろをついていきながらきょろきょろと校門、靴箱、廊下、と辺りを見渡してみてもやっぱり何も思い出せない。



「おはよっ、藤原!」



楓が教室に入ろうとした時だった。


待ち構えていたかのように、くるくるに巻いたポニーテールを揺らして女の子が横から出てきて楓の目の前に立った。


その右隣には栗色のあごできれいに切り揃えてあるボブの女の子と、左隣には黒髪ロングの女の子が。



「…なに?」