あの花が咲く頃、君に会いにいく。

「…なんて、ね。今のなし!みんなには私のことを忘れるくらい楽しい毎日を過ごしてほしいもん!」



ハッと我に返り、空気が重くなってしまう前に慌てて笑顔を作って楓を見上げる。


…だけど楓は笑ってなんていなかった。真剣な眼差しで、それでいて少しだけ悲しそうな瞳で私を見つめていた。



「…俺は、おまえのことを忘れたりなんてしない。何があっても絶対に」


「…っ」



嬉しかった。たとえそれが口約束だけだったとしても、自分を覚えていてくれると他でもない楓に言われたことが。



…ダメだ。溢れてしまいそうになる。


必死に蓋をしている気持ちが、想いが…出てきてしまう。



「…ねえ楓。最後に、行きたい場所があるの」



ちゃんと終わりにしないと。楓に、さよならをしないと…。





私が最後に選んだ場所は、夜の学校だった。


私たちのクラスに行き、今は空き机となってしまった窓側に置いてある自席の机にそっと触れる真似をする。


時刻は…六時四十七分。



「早乙女。おまえの…最後の未練、わかったのか?」