あの花が咲く頃、君に会いにいく。

楓は少し顔をしかめながらも、わかったと歩き出した。


やっぱり楓は優しい。ちゃんと私のことを考えてくれてたんだな…。



「すっかり暗くなってきちゃったね」



それから楓とお化け屋敷に行ったり、ゆっくり回れるアトラクションに乗ったりしているうちにいつの間にか時刻は五時半を過ぎていた。



「最後に観覧車乗りたい!」


「ああ」



ゆっくりと回る観覧車に楓と二人で乗り、向かい合わせに座る。



「今日はすっごく楽しかった。ありがとう連れてきてくれて」


「…いや、別に…」



もごもごと口ごもる楓に思わず笑いがこぼれる。



「今日家に行ったらお母さんとお父さんが一緒にいてね。二人、再婚するんだって。よかったよ、これでもうお母さんは一人じゃないから。あ、あとね茅乃たちが今日私のお墓参りに行ってくれてるみたいで。ドーナツ何種類も買わないと紫音に怒られちゃうよ、とか言ってたんだよ。もう、そんなことで怒ったりしないのになぁ」


「…そうか」


「…私はいつ、みんなの中から消えちゃうのかなぁ。今思い出してくれていても、いつか忘れられる日が来るんじゃないかって考えちゃう。これから先のみんなの未来を見ることができないなんて、悲しい。悔しい。辛いの…」



不思議だ。綺麗な夕焼けを眺めていたら、不思議と胸の内にあった本音がぽろりと溢れてしまったのだから。