次の日、目が覚めると部屋に楓の姿はなかった。


時刻はちょうどお昼を回ったところで、多分気を利かせて起こさないで学校に行ったんだろう。



「おはよーいや、こんにちは、かな?」


「わっ!びっくりした…」



またもや突然後ろに現れた天使様を、じろりと睨む。



「もうちょっと登場の仕方考えてよね」


「あはは、ごめんごめん。そんなことよりも、今日で君の49日が終わるよ。最後の未練はわかったの?」



にこにこと笑みを浮かべながら立つ天使様から視線を逸らし、「いや…」と曖昧な返事を返す。



「君が死んでしまった時刻の午後六時五十八分までがタイムリミットだよ。早くしないと、今日が終わっちゃうよ?」


「…それなんだけど、多分私悪霊になっちゃいそうなんだよね。だから先に謝っとく」



え、と天使様が驚いたように目を見開いた。



「最後の未練がどうしてもわからないんだもん。でもいいんだ、もう。悪霊になって生まれ変われなくても、もういいかなって」


「…そんなこと、言わないでよ」



顔を上げると、悲しそうに表情を歪めた初めて見る顔の天使様と目が合った。



「僕は君にちゃんと成仏してほしい。だって生まれ変わったら、もう一度君の大切な人に出会えるかもしれないんだよ?僕は君に幸せになってほしい」