49日まで、残り一日となった。明日には未練を解消しなければならない。


優香さんが旅立った日から、特にこれといったことは起きないまま何気ない日常を送っていた。


そうしたいとお願いしたのは私だから。


何かしたいことも最後の未練も思いつかなかったから、それなら最後の日まで普通に日常を送りたいと楓に頼んだのだ。


優香さんに今過ごしている日常は当たり前なんかじゃないと教えてもらったから、特別なことをしなくても今のままでいいと思ったんだ。



たとえ、このまま未練を思い出せなくて、悪霊になろうとも…。



「ねえ、楓」


「なんだ?」



すっかり楓の布団で一緒に寝ることが日常化となっていた。


もうすぐ楓とは会えなくなる。だから少しでもそばにいたいんだ。



「もしも、私が未練解消できなくて悪霊になっちゃったら…その時は迷わず祓ってね」


「…俺におまえほどの悪霊を祓える力なんてないぞ」


「何よ、私ほどの悪霊って。どんだけ強力なの」



背を向け合っていた楓がこちらを向いたのが気配でわかった。



「あーあ、どうせ死ぬってわかってたら、イケメンな彼氏作りたかったのになー。初恋もまだなままあの世になんて逝きたくないもん。あ、もしかしてこれが最後の未練かもね。初恋がしたいですって。なんて、もう死んでるんだから恋なんてできないっていうのに」