LIBERTEーー君に

「わからないな。君の演奏と安坂さんの演奏は違う。他人と比べる必要が?」

ミヒャエルは首を傾げた。

「はあ? 同じコンクール出場者の、しかも伴奏者がどちらもお前。気にならない方がおかしいだろ?」

詩月が首を傾げる。

「君は安坂さんの演奏を聴いて、自分の解釈を変えるのか? 自分の弾き方を変えるのか?」

「いや、そうではないけれど」

「違うから良いし、違うからこその価値観ではないのか? 上手い下手だけでコンクールを競うなら、コンクールの意味がない」

ミヒャエルがため息をつき口を尖らせ、詩月を見る。

「安坂さんの弾き方が気になるなら、安坂さんの演奏を再現していい。安坂さんなら、きっとこう弾く的な」

ミヒャエルの目が驚きに変わった。

詩月がヴァイオリンを取り出し、調弦を始めると、ミヒャエルが身を乗り出した。