LIBERTEーー君に

「2ヶ月ーー」

「2ヶ月あれば、じゅうぶんだ。それから、ブラームスは忘れていい」

「もう、演奏しないのか?」

「餌は蒔いた。アクセス回数も上々だ。安坂さんみたいに気づいたかもしれない奴らがいても、問題ない」

「本番のピアノ伴奏、本当にいいのか」

「何を今更?」

「周桜Jr.と呼ばれたくないんだろ」

ミヒャエルが顔をしかめ、すまなさそうにしている。

「往生際が悪い奴だな。勝つために、ひと肌脱いでやろうとしているのに。どう呼ばれようが、ブラームスコンクールが終わるまでは気にしない」

「良い奴だな、お前」

詩月の頬がほんのり紅くなった。

「ムカつく」

詩月は言いながら、ミヒャエルに背を向けた。

「物好きだよな。よりによってファイナルに『チャイコフスキー、ヴァイオリン協奏曲二長調』発表した当初「演奏不可能」と評され、ウィーンでの初演に酷評された曲を選ぶとは」