LIBERTEーー君に

「心配したんだぞ、皆で」

ミヒャエルが咳払いした。

「あ……、心配かけてすみませんでした。嬉しくて調子にのりすぎました」

詩月は深々と頭を下げた。

「最近、少し体調が優れないよな。微熱でもあるんじゃないか?」

ミヒャエルが詩月の耳元で囁いた。

「嫌なことを思い出させるんだな」

詩月が小さく舌打ちをする。

「君は理久よりも心配症だ」

「お前は考えなしに無茶をしすぎる」

「演奏中に我が身の心配ができるほど、余裕はない。演奏で手いっぱいだ。1回1回が1度きりの演奏だろ」

同じ演奏は二度とできない。

詩月はミヒャエルに訴えるような目を向けた。

ミヒャエルはキラキラした目、眩しいくらい真剣な希望に満ちた目を向けられ、自分自身にこれほどの熱情があるかを考えた。

1回1回の演奏をこんなに大事に思って、演奏していたかと、自分自身に訊ねていた。

詩月の演奏の先には聴き手がいるーー改めて感じた。