LIBERTEーー君に

ビアンカはユリウスが話終わるまで、ユリウスを見上げて聞いていた。

ミヒャエルがバックヤードから、自分の上着を持って出てくると、詩月にそっと掛けた。

「あたしもだよ、あたしもベーゼンドルファーを弾いて嬉しかったよ。スッゴいピアノだよね、ワクワクした」

「喜んでもらえてなりよりだ」

「でも、もっと嬉しかったのは詩月と演奏できたこと、あのピアノでは無理だったから」

ビアンカは前のピアノを指さした。

BALの1段高い場所に移動された前のピアノは、丁寧に磨かれ囲われて、飾られている。

「年代物のピアノだ。19世紀初頭の」

ビアンカが静かな声に目線を上げると、詩月がベーゼンドルファーの傍らに立っていた。

「屋根を開けた裏側に記してあった。さすがに作者までは文字が掠れていて読めなかった」

「詩月!? 大丈夫、もういいの?」

ビアンカは詩月を頭から爪先まで、穴が空くほど見つめ、身体検査をするように確かめた。