LIBERTEーー君に

先ず、難しいのはスピードだ。

正確に16分音符を刻まないと、リズム感が失われてしまう。

左手部分はとくに難しく指がつりそうになるほどだ。

詩月の演奏からは、それさえも難なく簡単に弾いているように感じる。

地底の底から響くような低音のピアニッシモから始まる。

地上に湧き出したマグマのように、緊張感もMAXで激しくなっていく。

提示部65小節、展開部70小節、再現部70小節、終結部65小節と、均衡の取れた4部構成だ。

繰返えされる旋律は、ピアニッシモから繰返えすごとフォルテッシモへ激しさを増していく。

ベーゼンドルファーの鍵盤の重ささえも感じさせない。

ーーあんな細い指で

ミヒャエルは詩月の指が自分の半分の太さしかないと、いつも思う。

小指と薬指はスリムサイズのタバコよりも細い。

ミヒャエルは詩月が指を広げるとミヒャエルよりも長く、1オクターブに余裕で届くのが、不思議だった。