「もうダメだと諦めていた時、詩月が現れた。そいつを歌わせてくれた。だから、まだ活けると希望を持ってしまった……のかね」

「お釈迦にしろとは言わない。大事にしてきたピアノだ。店のシンボルとしてだな」

「そうだな」

「どうだ、少しずつ出しあって。足らない分は俺たちが出そうじゃないか」

宗月が店の客を見回し、ハインツとユリウスとエィリッヒに同意を求めた。

「それなら、僕にも協力させてよ」

詩月が演奏を中断し、手を挙げた。