ミヒャエルが声を荒らげ、躍起になっているのに対し、詩月は何をそんなに熱くなっているのかとでも言いたげな様子だ。

捲し立てるミヒャエルの顔を じっとみつめていた。

「練習室にこもるより、街頭で練習したり、BALやサロン「フレデリック」で弾いたりして練習するお前とは違うんだ」

「遊びで弾いているみたいに言うんだな。人さまに聴かせる演奏をただ楽しんでいるだけ、気楽に弾いているだけだとでも? 僕はいつも聴かせるレベルにまで完成させて演奏しているつもりだが」

詩月は飄々とした涼しい表情で、悪びれもせずに反論した。

「わからない奴だな。誰もがそんな芸当ができるほど器用だと思っているのか?」

「人を特殊みたいに」

「はあ!? 自覚していないのか」

ミヒャエルはそう言うとフッと吹き出した。

続けて「アハハハハッ」と腹の底から笑いだした。

「失礼だな。笑いだすとは……何だよ」