LIBERTEーー君に

詩月は声を出さずに言うと、再び顔をそむけた。

宗月がユリウスから、エリザベートコンクールが延期になってからの詩月の様子を詳しく耳打ちされ、頷いているところだった。

「いつまで続くのかな。ウィルス騒動。コンサートは有料ネット配信になってきているし、ライブは原則禁止、3人以上の飲食は自粛。味気ないね~、ったく」

BALの客たちが酒を呑み交わしながら、ぼやいていた。

「こんな衝立(ついたて)越しで、1個飛ばしに間隔開けて、マスクして……侘しいぜ」

「キムナジウム。景気がいいヤツ弾いてくれ」

酒呑み客の中には、詩月のことをギムナジウムと呼ぶ者が幾人かいる。

外国人には日本人が実年齢よりずっと若く見えるのか、華奢で少々童顔の詩月は、中学生か高校生くらいに見えるらしい。

「ビアンカ、一緒にどう?」

詩月はピアノに、指を構えると軽快な演奏をし始めた。