LIBERTEーー君に

「心外だな。たしかにガッカリしたし、落ちこみもしたけれど、立ち止まらないと、前を向くと決めたんだ。最善を尽くすと決めたんだ」

「あーーーっ! ヴァイオリニストとして街頭演奏を繰返し、実はピアノコンクールに出ます。兵法三十六計、瞞天過海だよな。なあ!」

詩月はミヒャエルを見上げ、ため息をつき、「アハハ」と笑い出した。

「拍子抜けさせてくれるね、ミヒャエル。真面目な話をしているのに」

詩月はそう言うと、エィリッヒの方へ向き直った。

「僕は勝つためにウィーンに来たんだ。コンクールに勝って、ピアニスト周桜詩月を証明するために」

郁子がコンクールに出られないと知って落胆し演奏に身が入らず、ぼやいてばかりいた詩月とは思えなかった。

「君の口から直にその言葉が聞きたかったのさ。君はずっと心、此処に有らずだった。ヴァイオリンは兎も角、ピアノに関しては」

「エィリッヒ、人が悪いーー」