LIBERTEーー君に

「わかってないな。ユリウスも父さんもハインツもエィリッヒも。街頭演奏で1番恐いのは、聴いている側の目だ。演奏し始めて、聴き手がノってくるまでの時間は、今でも緊張で震える」

「お前が!? いつでも自信満々に演奏しているだろ」

ミヒャエルがどんぐり眼で、声を上げた。

「人を能天気みたいに。自信満々なわけないだろ。毎回、一か八か。1発勝負なのに」

「良かった~。緊張してるの、俺だけかと思ってた」

「ホッとしている場合か? 回を重ねるごと、聴き手は耳が肥えていくんだ。ちょっとしたミスも聞き逃がさなくなる。聴き手の層も厚くなるし、レベルも上がってくるんだ。退屈させずに、飽きさせずに、しかも騙し通せる覚悟はあるのか」

「詩月、言うな~。君はどうなんだ。コンクールが延期になってホッとしていないか」

エイリッヒの声は険しかった。