LIBERTEーー君に

「ケルントナー通りではブラームス。ここでは本命の曲に切り替えよう」

詩月とミヒャエルの会話に、宗月と宗月のマネジャーハインツと詩月の師匠ユリウスそれにエィリッヒも加わっていた。

5月下旬。

新型ウィルスは相変わらず多くの感染者を出していた。

連日、感染者の数が報道されていた。

WHOではワクチン製造も検討されているようだが、まだ暫くかかりそうだ。

感染者収容で医療機関は逼迫し、過酷な勤務を強いられていた。


「作戦とはいえ、なかなか粋なことを考えたものだな」

ハインツが詩月の顔をまじまじと見つめて言った。

「ブラームスのコンチェルトを繰り返し聴かせて、コンクールでもブラームスを演奏すると見せかけておいて、実はコンクールでは、ブラームスは演奏せずに登録しておいた別の曲を演奏する」

「何と言ったか……兵法三十六計だな」