LIBERTEーー君に

「ミヒャエル!? 落ち着け、深呼吸しろ」

「あ……あぁ」

「調弦は済ませてある」

ミヒャエルは天井を仰ぎ、両腕を広げた。

胸いっぱいに息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。

詩月はそれを確認し、ピアノを奏で始める。

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲二長調 op35だ。

通称チャイコンと呼ばれ、世界4大ヴァイオリン協奏曲とも言われている。

第3楽章から成り、通しで演奏すると35分だ。

悠々とした調べの序盤から第1主題は叙情的な調べになり、第2主題は抒情的になり、展開部は華やかに進み、カデンツァとなり、ヴァイオリン独奏が再び第1主題を静かに奏でる。

第1楽章はソナタ形式で、約18分だ。

華やかな技巧の演奏は激しいリズムで楽章を閉じる。

作曲された当初は、著名なヴァイオリニストに難しすぎて演奏できないなどと、酷評された作品だった。