LIBERTEーー君に

「それなら」

詩月はサッとピアノの前に座った。

「詩月?」

思いが逸る。

ーー任せる? 何を言っているんだ。こんなにも演奏したい君がいるのに。演奏したい曲があるのに

静かに「雨だれ」の調べがBALを包みこんでいく。

津々(しんしん)と降り注ぐピアノの音色に、ビアンカは窓ガラスを覗きこんだ。

「雨が降ってきた気がしたのに……」

ビアンカは思わず呟いて、急いで3脚にスマホをセットした。

詩月が演奏し始めた「雨だれ」に、詩月がショパンを演奏するのは珍しいなと思った。

いつぶりだろうと考えた。

「ヘェ~珍しいな。前にショパンを弾いたの1年前のイブだぜ」

ビアンカはミヒャエルがそう言ったのを聞いて、「あっ!」と息を飲んだ。

詩月が誰のために演奏しているのか、誰と演奏したいのかを悟った。

「ったく、不器用なんだから」