LIBERTEーー君に

それが郁子との思い出の曲、ショパンの「雨だれ」だ。

中学2年生だった。

あのコンクールでショパンの「雨だれ」を演奏しなければ郁子と詩月の縁はなかった。

今は郁子が腱鞘炎になり、ショパンの「雨だれ」を演奏できるかどうか、正直きわどい。

それでも詩月は郁子と演奏したいと思っている。

どんなに拙い演奏でも、郁子が自由に楽しく演奏できればいいと思う。

束縛なく思うままに今、演奏でき得る限りの演奏をしてほしいと。

郁子が気兼ねなしに、一緒に演奏したいと挙手してくれたらと心から願っている。

自由にーーそう『LIBERTE 』だ。

「ビアンカ」

「何!? 詩月。今、募集配信の準備してるよ」

配信の段取りを考え、着々と作業を進めていたビアンカは、ピタリと手を止めた。

「手伝うよ」

「よかった~。バックミュージックをどうしようかと思ってた」