LIBERTEーー君に

まるで音楽がなくても、人々の生活は何ら変わらないと云うように。

ビアンカは騒動の後、数日は動画を撮ろうとはしなかった。

詩月はビアンカなりに何か感じるところがあったのだろうと気になったが、平静を装いそっと見守った。

詩月がウィーン留学し、約1年半。

年代物のBALのピアノは、たびたび調律師を呼び調律していた。

にも関わらず、1週間もしないうちに音が狂い出すのを観て、詩月は調律に興味を持った。

いつでも万全の状態でピアノを演奏することが、どれほど恵まれているかを考えさせられた。

エリザベート王立コンクールのヴァイオリン部門の後から、ピアノメーカー所属でBALのピアノを調律しに来る調律師に、調律のノウハウを教わっている。

BALのピアノはベーゼンドルファーに代わったが、詩月は時々、年代物のピアノが弾きたくなる。

狂った鍵盤の音を駆使しながら、演奏するのも乙なものだし、何より色んな意味で訓練になる。