「気づいたか?」

詩月が体を起こそうとするとミヒャエルが、そっと手を添えた。

「良かった~。ロベルトが膝をついたかと思ったら、詩月が気を失うんだもの」

ビアンカが胸を撫で下ろし、詩月の顔をしげしげと見つめた。

「息切れするほど、胸ぐらを掴まれるとは思わなかったよ」

「お前はボロカスに言い過ぎだ。殴られなかっただけマシだ」

詩月が呑気に言うと、ミヒャエルが間髪入れずに言った。

「そうだよ。何であんなに挑発したかな?」

「元はと言えばロベルトが……」

詩月は言いかけ、ため息をついた。

「コンクールは魔物とは聞くけれど、優勝候補だのと期待が大きいと、あんな風になるのかな」

ミヒャエルが妙に納得し、染々している。

「いい迷惑だ」

詩月はポツリと呟いた。

「あの後、騒ぎになって詩月を此処に担ぎこんだんだよ」