LIBERTEーー君に

詩月の声がロベルトの表情を固くした。

ブラームスコンクールのセミファイナル後、コンテスタントやコンクール関係者からの噂が飛びかった。

優勝候補だったコンテスタントが数人セミファイナルで落選したという話だった。

ミヒャエルはロベルトも、その内の1人なのかもしれないと思った。

「誰に演奏を聴かせたい、誰に1番届けたい? 届けたい相手に、思い切り演奏してみろ」

ロベルトは眉を吊り上げ、目を見開き、詩月を睨みつけた。

「悔しくないのか」

詩月がとどめを刺すように、冷たく突き放した。

ロベルトは構えていたヴァイオリンを下ろし、詩月の肩に手を掛けた。

「本来の実力を出し切れなかった、悔しい。それで!? 悔しいと嘆けば、誰かが助けてくれるのか」

ロベルトはヴァイオリンをガタッと、ピアノの上に置いたかと思うと、詩月の胸ぐらを掴んだ。