LIBERTEーー君に

情熱的な表現でと表記された第1楽章、ヴァイオリンのG線上で弾かれるイ短調の豊かな旋律は、「ふざけるな」と叫んだ同一人物の演奏とは思えなかった。

ピアノ演奏は16分音符で伴奏をし、ヴァイオリンの旋律に表情を付け加える。

ヴァイオリンが旋律を弾き終わらないうちに、6小節目からピアノが同じ旋律を6度上げニ短調で奏で始めめ、また直ぐにヴァイオリンがヘ長調で旋律を奏でた。

通常は転調が曲の中間部または展開部で見られることが多い。

だが、この曲の第1楽章は最初から転調が繰り返される。

ヴァイオリンとピアノが掛け合いながら転調する。

ロベルトは詩月のヴァイオリンの独特な音色に戸惑い、遠慮がちに躊躇いながら演奏しているのか、詩月のピアノ伴奏に明らかに負けていた。

ロベルトと詩月の技量の差が歴然としている。

「セミファイナルで弾きたかった演奏か? それが君の最善か」