LIBERTEーー君に

「それでよく進級できたな」

詩月がミヒャエルに言うと、ミヒャエルは「辛うじて『不可』にならなければいいんだ」と飄々として言った。

「卒論はどうするつもりだ。締めくくりくらいまともな物に仕上げろよ」

ミヒャエルは、どうやらそれが酷く胸に刺さったらしい。

数日後、卒論用に用意した資料を紙袋いっぱい詰めこんで、詩月に泣きついた。

ショパン、ベートーベン、ブラームス、モーツァルト、チャイコフスキー、バッハ……。

作風も背景もバラバラの作曲家の資料を集め、いったい何がしたいのかが、詩月にはさっぱり解らなかった。

「コンクール対策における街頭演奏の有効性と観客の好む傾向」

詩月はレポート用紙の1行目に書かれているタイトルらしきものを見つけて、「なるほど」と呟いた。

「ずいぷん無謀なテーマだな。街頭でコンクール対策に演奏したのは、ほとんどブラームスだった」