ユリウスはソファーに座るよう促し、自分もソファーに座った。

「セミファイルの日の演奏は、安坂さんの時もミヒャエルの時も僕だけが作り出した演奏ではなかった。安坂さんとミヒャエルのヴァイオリン演奏だったからこその演奏だったのに」

「そうだな」

「僕だけが『雨の歌』を弾いても、あの日のピアノ演奏は再現できない。それに……」

「ん!?」

「自分の意志以外で目立つのは、ちょっと……日本でXCEON とコラボしていた時、結構たいへんだったんだ」

「大変だったのは体の方もではないか」

「……それはじゅうぶん頭に入れているよ。最優先事項だ」

「宗月には相談しなくていいのか」

「事後報告だけでいいかと。相談したところで決めるのは自分だから」

「どう答えを出すにしろ、慎重にな」

Ich weiß(わかってる)

「無理はしてないな」

「たぶん」