LIBERTEーー君に

「この演奏、なんつーかブラームスはこんなにも語りかけてくるんだな」

「そうね。このコンクールの取材を何度かしているけれど、彼らのような演奏は初めてだった」

雑多の中での会話は演奏している詩月たちの耳に届かない。

けれども、詩月たちは自分たちの演奏に集って、演奏に耳を傾けている聴衆たちの熱量をしっかりと感じていた。

「ブラームスコンクール、やはり付け焼刃では限界があるな」

「でも、いい線までいけたんじゃないか。俺たち」

演奏終了後、貢とミヒャエルが言うと、詩月がキッパリと言った。

「結果だけが全てではないさ」

負け惜しみでも強がりでもなく、晴れやかな笑顔だった。

「安坂さん、緒方と理久に報告しなきゃ」

「あっ、ああ。そうだな」

貢は思い出したように、スマホを取り出した。

貢が画面操作をしていると、貢のスマホの着信音が鳴り出した。

「えっ!?」