LIBERTEーー君に

ケルントナー通りの「ヴァイオリン王子」としても評判のヴァイオリニストだ。

3人の演奏にしだいに人が集まり、いつの間にか人垣になった。

「ピアノ伴奏していた人よね、あの細身の」

「周桜Jr. だよな、アイツ」

「あの中で1番上手くない?」

「スゴいな、アイツら」

「あの演奏でも1位ではなかったのよね」

さまざまな言葉が飛び交う。

「周桜J r. あのヴァイオリン、たしか……『ローレライ』と曰く付きの」

「ヴァイオリンより、ヤバいのは周桜J r. 本人だよ」

コンクール内で幾度も演奏されたブラームス/ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト長調Op.78「雨の歌」だ。

なのに、「またか」と云う声は聞こえてこない。

「楽しそうだな」

入賞者の取材をしていた報道陣たちがカメラを構え、詩月たちの撮影を始めていた。

「順位など関係ないな」