LIBERTEーー君に

「気が早いヤツだな」

貢が言い終えるが早いか、詩月がヴァイオリンを奏で始めた。

「エッ!?」っと、声をあげたのはミヒャエルと貢それにユリウスたちが同時だった。

弾き始めたのは、ブラームス/ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト長調Op.78「雨の歌」、ピアノ伴奏パートだった。

まるで早く演奏しろとでも言うように、ヴァイオリンを奏でる。

貢とミヒャエルは詩月のピアノ伴奏パートに合わせてヴァイオリンを演奏した。

詩月が奏でるのは、1758年ダニーニ作のヴァイオリンだ。

低音部と高音部の音が同じ楽器から奏でられているとは思えないほど妖しく艶やかな音を出す半人半獣の神になぞらえ「ケンタウロス」と呼ばれ、さらにはその妖しい音色から「シレーナ(セイレーン)」と名付けられている名器だ。

詩月自身「ガタニーニ」を奏でる「ローレライ」と云う異名もある。