LIBERTEーー君に

「聴き手の心をどれだけ掴んだかは、点数では計れない」

「詩月。確かにそうだ」

男性が深く、首を縦に振った。

低く、10秒弱プザーが鳴った。

貢は緊張し、強張った表情で舞台に立った。

観客席を右から左へゆっくりと見回し、ユリウスと目が合うと、ホッとひと息ついた。

ゆっくりと、一礼し定位置に着く。

オケによる序奏が終わった後、ヴァイオリン・ソロ。

そしてそれに続き第1主題が奏でられる。

心にすっと入り込む 哀愁に満ちた音色か胸を打つ。

ポルタメントやグリッサンド、ヴィブラートを最小限にとどめ、素朴で飾り気がない、それが1層味わい深い。

1音1音の音程の正確さ、上質なシルクのようなフレーズの滑らかさ、繊細でぶれない演奏がメロディを引き立てる。

少しずつ高鳴っていく切ない悲哀は、その後の展開部、カデンツァ、再現部にコーダへと続く演奏にも期待が高まった。