LIBERTEーー君に

詩月は午後からの審査を観なから、そんなことを考えていた。

ファイナルに進出してきたコンテスタントが、下手なわけがない。

皆、じゅうぶんに上手い。

なのに、退屈なのは何故だろう、詩月は何度もため息をついた。

「どうした? つまらないか?」

ユリウスがそっと訊ねた。

「安坂さんとミヒャエルの順番まで時間潰してきていいかな。気が滅入っちゃって」

「構わないが、貢とミヒャエルの演奏はちゃんと聴いてやれよ」

「わかった」

詩月は言うと、迷いなく立ち上がり、姿勢を低くし、観客の邪魔にならないよう退室した。

思い切り背伸びしロビーのソファーに、腰を下ろした。

「腹一杯で出てきた(くち)かな?」

初老の男性が詩月に話かけた。

「ええ、まあ」

「評価を意識した真面目な演奏ばかりだ。退屈この上ない」

「どなたか知り合いが?」