LIBERTEーー君に

「本当に解っているのか? そうしたのは君だ」

「まあまあ。エィリッヒ、抑えて抑えて」

エィリッヒは詩月に詰め寄り、掴みかかる勢いだった。

「点数表示はともかく、『解釈をどう捉えているか』『どんな思いで演奏したか』と問われた意味を考えることだ。ただでさえ目立つ上に、素性を知られ注目されていることを忘れるなよ」

詩月はフ~と深くため息をついた。

エィリッヒは師匠として教え方は申し分ないのだが、指摘と小言が説教じみているのが、いただけない。

過ぎてしまったこと、下された評価、その場限りの審査員の言葉をダラダラと考えるのは性に合わない。

詩月は要件だけ頭に入れて、サッと気持ちを切り替えたかった。

評価は密室でおこなわれない。

1次からファイナルまでの全審査、コンテスタントの演奏終了後、その場で獲得ポイントが速やかに伝えられる、公平で明快な評価で知られている。