LIBERTEーー君に

「本番で倒れず演奏できたから良かったものの、もし演奏途中で倒れでもしていたらと思うとゾッする」

「で、どういう状態だ?」

ユリウスは詩月の様子にはお構いなしに、訊ねた。

「安坂さんもミヒャエルにも容赦なしに……ガンガン演奏したから……力尽きたのだと。眩暈(めまい)と息切れ、倦怠感、で1人で歩ける気が……しない」

「言わんこっちゃない。無茶にもほどがある」

自分の出番がもしかしたら有るかもしれないと思い、覚悟していたのに、出番がなかったことが癪だったのか。

エィリッヒは冷たく言い放った。

「2人のセミファイナル通過で一応、君の役目は終わった。ファイナルでは彼ら本来の実力が試される。彼らの実力で果たして、何処まで評価されるか。彼らには厳しい審査になるだろうな」

「わかってるよ。審査員の評価にはファイナルへの期待がこめられていた」