LIBERTEーー君に

「ミヒャエル、礼が先だ」

詩月がミヒャエルに小声で言い、ミヒャエルの腕を押さえた。

ミヒャエルは慌てて頭を下げた。

舞台裏へ引くなり、詩月がミヒャエルに凭れかかり、しゃがみこんだ。

「……ミヒャエル」

舞台裏スタッフが素早く駆け寄った。

「少し……じっとしていれば……収まりま…す」

ミヒャエルが膝をつき、詩月の顔を覗きこんだ。

「俺が側にいます」

キッパリと言い、詩月の背中を擦る。

「すみませんが、此処は午前中の審査が終わり休憩に入りましたので、一旦閉鎖します。ロビーへ移動してください」

ミヒャエルは返事をすると、詩月を抱きかかえてロビーへ出た。

「ミヒャエル、良くやった」

ロビーで待ち構えていたユリウスとエィリッヒが、走り寄った。

「詩月が」

ミヒャエルはそれだけ言うのが精一杯だった。

「……安心したら……気が抜けただけだ。下ろせよ」