LIBERTEーー君に

身震いのするほど冷たい雨とは?

この鼓動する胸を冷やすほどの雨とは?

命に忍び入る雨とは?

曲の解釈を考える時、詩月が迷った部分だ。

優しく穏やかな雨ではないはずだ、夏の雨を詠んだ歌ではあるけれど、真夏の雨ではないだろうと。

梅雨時の激しく降る雨でなければ、身震いするほど冷たくはないはずだ。

胸を冷やすほどの冷たさも真夏の雨ではない。

命に忍び入るほど冷たい雨も真夏ではなく、梅雨時の雨に違いないと。

歌詞と曲調の矛盾をどう解釈し、どう表現するのかを演奏するたびに考えた。

答えは未だ出ていない。

貢と演奏するごと、歌詞とブラームスが第3楽章に引用した歌曲の主題の解釈を模索し続けてきた。

ーー安坂さんは今、どんな思いで演奏しているだろうか

詩月は思いながら、貢の奏でる「雨の歌」に挑むようにピアノを弾いた。