LIBERTEーー君に

市街地から徒歩で15分程度とは、思えない風景だ。

貢はセミファイナル1日目の6番目、午後からの順番だった。

曲目は1曲目にブラームス/F.A.E.ソナタ スケルツォ ハ短調、2曲目にブラームス/ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番 ト長調Op.78「雨の歌」を指定された。

サロンでもアマデウスでもBALでもブラームスは評判が良かった。

街頭演奏にはケルントナー通りで、ソロで弾いたり、ミヒャエルと弾いた。

シュテファン広場では、詩月の弾くストリートピアノと合わせて演奏した。

貢は幕内で、手のひらに指で「人」を書いて飲みこむ仕草を数回繰り返した。

「審査員も観客も聴き手。いつも通りに演奏できれば御の字ですから」

出番前、詩月は貢にそっと耳打ちした。

「緊張したら、観客席に見知った顔を探してください。落ち着きます。ユリウスもエィリッヒも聞いていますから」