ポツポツと降る雨から、シトシトと降る雨になり、窓を鳴らす雨になり、そして窓ガラス全面に流れ伝う雨になった。

窓から見える景色を揺らす雨になり、そして煙るように景色は白くなった。

「雨だーーヴァイオリンとピアノが奏でる雨」

詩月のピアノ伴奏が貢の雨を導いてーー詩月、何て奴だ。

相手によって自由自在に演奏を変える、相手の演奏さえも操る。

昨日、解釈の見直しを話したばかりで、こうも合わせられるのか。

2人が演奏を重ねるごと、演奏はどこまで完璧に仕上がるのか。

本番でこの演奏は、どう演奏されるのか。

ミヒャエルはそう考えると身震いがした。

恐い相手だ、コイツとコンクールを競うんだと思うと、背筋が寒くなった。

同じ曲を選択しなくとよかったと心底、思った。